キャメロン・マイヤーズ(以下、キャム)は、世界で注目される若手の中距離選手の1人として、その地位を確立しています。わずか19歳にして次々と記録を更新し、忍耐力や優れた有酸素能力の構築、そしてスマートなトレーニングが組み合わさることで、彼がどこまで到達できるのかを体現しています。

速いタイムと果敢なレース展開の裏には、高精度や一貫性、そしてデータを賢く活用するという彼のトレーニング哲学があります。キャムのトレーニングは、有酸素能力の強化、レース特化型の強度設定、そして身体の反応を細かく把握することに重点を置いています。

緻密なペースコントロール、一貫した練習量、そして目的に応じた強度設定がどのように融合し、彼を中距離界のスターに押し上げているのか。その全貌を以下にご紹介します。


「最も大切なこと」を常に最優先に

飛躍的なシーズン後も、キャムはトレーニングを大きく見直す必要は感じていません。重視しているのは一貫性と細かな調整であり、成果をもたらした基礎を引き続き積み重ねていくことです。

「昨シーズンで得た最大の学びは、最も大切なことを、最も大切なままにしておくということでした」

その「最も大切なこと」とは、強固な有酸素ベースです。常に高強度トレーニングを追い求めるのではなく、持久力・スピード・高強度トレーニングのバランスを取りながら、身体に過度な負担をかけることなく着実な成長を目指しています。

有酸素能力を重視し、十分な閾値走やイージーラン、VO₂maxトレーニングをバランスよく組み合わせています

ベースフィットネスの構築期において、キャムは週間120kmの走行距離を維持し、トレーニング負荷は合計で 1,100を超えます。多くの週で、負荷はハードランとイージーランにほぼ均等に配分されています。すべての一歩に明確な意図があり、無駄な走りや「ジャンクマイル」は存在しません。重視されているのは走行距離ではなく、あくまでトレーニングの質を保つことです。

キャムはレースシーズンに近づくにつれて練習量を減らしていく


心拍数と運動強度を正しく理解する

キャムは、多くのアスリートと比べて走行時の心拍数が少し高くなる傾向があります。そのため、閾値走では185〜190bpmという心拍数で推移し、時速20.5km以上のペースを維持することも珍しくありません。しかし彼は、その数値自体に一喜一憂するのではなく常に考えながらデータを捉えています。

「ラボテストや乳酸測定を行っているので、心拍数が190の時でも、乳酸値はおそらく2.5mmol/L前後だと分かっています。それは必ずしも追い込みすぎているわけではありません。すべてのゾーンを記録し、現在の状態を確認しながらセッションで効果的に追い込みつつ、その後しっかり回復できるようにしています」

最近のテストでは、フィットネスの向上とともに、心拍応答がより効率的になっていることも確認されています。

「ここ6〜8週間で、心拍数はかなり下がってきました。最大心拍数は依然として高いままですが、全体的に約10拍ほど落ち着いてきています」

COROS心拍センサーを使用して、より正確な心拍データを取得することで、キャムは自分の生理特性を正確に反映したデータ管理を行っています。これにより、イージーランでは無理をせず、ハードなセッションでも冷静に強度をコントロールすることが可能となっています。

変化走の実施

キャムのトレーニングを特徴の1つとして、変化走を実施していることが挙がります。これは、閾値強度付近を上下に行き来することで、疲労の蓄積や身体への過度な負担を抑えながら、レースを想定した高いレベルの有酸素能力を引き出すトレーニング方法です。

「私のコーチは生理学の専門家で、かなりクラシックな考え方を持っています。閾値を一度超えてから、再び閾値、もしくは少し下まで落とし、その強度を維持する、という変化走のアプローチをとても大切にしています」

このトレーニングの効果は、単なる生理的な面にとどまりません。戦術的にも、レース中に疲労した状態でペース変化に対応するという、実戦さながらの状況を再現しています。

「レースでは、すでに疲れている中で相手の動きに反応しなければなりません。疲労した状態であえてきつい反復を行うことで、そうした局面に対応できる力が身につくんです」


自己ベスト更新を目指すランナーへのヒント

トレーニング内容について、キャムが指摘する大きな落とし穴の1つは、その日の体調に関係なく設定タイムを正確にこなすことに固執してしまうことです。

「調子が良くないと感じたらスピードは維持したまま距離を短くしたり、レストを長めに取ったりする判断がとても大切です。設定タイムと違っても、それはそれでいいのです」

トレーニングの目的は、1回のワークアウトで「勝つ」ことではなく、数週間、数か月にわたって安定してセッションを積み重ねていくことにあります。

「1回のセッションから回復するのに 3~4日かかるとしたら、2日後にまた同じようなトレーニングができる選手より、本当に多くの成果を得ていると言えるでしょうか?」

こうした意図を保ちつつ柔軟に調整する考え方こそが、データの価値を最大限に引き出します。的確なフィードバックを得ることで、より合理的な判断が可能となり、パフォーマンス向上に繋がっていくのです。


長期的な成長を可視化する

成長を実感したいという思いは、すべてのアスリートに共通しています。キャムは、単発の指標となるワークアウトに頼るのではなく、シーズンを通じてレース結果とCOROSのデータを活用し、自身が正しい方向に進んでいるかを確認しています。

年ごとのパフォーマンスを比較することで、フィットネスが確実に向上しているかを客観的に判断できます。

「3000mの記録でいえば、昨年の7分33秒に対し今年は7分27秒で走れていて、シーズン序盤から自分の上限が高くなっていることが分かります」

キャムにとって、こうした変化はベースフィットネスのグラフとして可視化され、トレーニングを長期的な成長へと繋げる指標となっています。

「ベースフィットネスが向上していれば、よりレースに特化した高強度トレーニングに取り組める土台が整っているということです。そして、そうした特異的なトレーニングに入ると、一時的にベースフィットネスの数値が下がることもありますが、それは決して悪いことではありません」

ベースフィットネスはどのように算出されるのか?ベースフィットネスは、直近42日間のトレーニング負荷の平均値です。多くのトレーニング適応はおよそ6週間の中期間にかけて影響を受けるため、この数値は現在の有酸素レベルを的確に反映します。

目的意識を持ってトレーニングする

キャメロン・マイヤーズのトレーニングを見ていると、「スピード」とは決して単独の要素のみで成り立つものではないということを教えてくれます。それは、強固な有酸素能力、的確なペースコントロール、そして運動強度を正しく理解することで築かれています。そして、COROSのデータを活用することで、キャムはすべてのトレーニングに明確な目的を持たせ、これからも更なる高みを目指して着実と積み上げていくでしょう。

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