ヤコブ・インゲブリクセンは、現代の20代選手としては最も成功している中長距離選手の1人です。
彼が他の選手よりも優れている点はいくつかあります。その中でも重要なのが、多くの努力感をコントロールするためにトレッドミルを使用した室内練習を重要視し、
それを一貫性を持って行っているということです。
今回の記事では、ヤコブがどのように室内練習を行っているのかについて掘り下げますが、どんなランナーにとっても有益な内容となるよう以下にご紹介します。
着用デバイス:COROS心拍センサー + COROS PACE Pro
使用機能/分析ツール:スマホ表示 + COROS Training Hub
トレッドミルでの強度管理練習
ヤコブは年間を通して、有名な 「ダブルスレッショルド」 の練習日を何度も行い、通常、その1回目の練習をトレッドミルで行います。
※ダブルスレッショルド:閾値付近の中強度練習を1日に2回行うこと
「僕にとってトレッドミルは、屋外よりもはるかにコントロールしやすいです。 風やコーナリング、その他のコンディションに左右されることなく、設定ペースに対して集中できます」
ヤコブのトレーニングの多くは、ワークアウトごとに特定の努力感(や強度)の維持を重視しています。それがどんな努力感であろうと、それを上回らず、下回りません。
「トレッドミルでの走行中は心拍数や血中乳酸値、ペースを注意深く観察することができます。そこで、自分の体調を把握することができ、心拍数、血中乳酸値、ペース、そして体調の4つの要素が、練習を成功に導くための重要な要素だと考えています」
ヤコブはどうやって退屈な室内練習を継続しているのか?
トレッドミルでの練習を敬遠しているランナーも多いですが、ヤコブはトレッドミルの練習をモチベーションに変えています。
「私はトレッドミルでの練習は競争だと思っています。
決めたペースを刻むことに集中して、設定の範囲内でワークアウトを完了させることに挑戦いしています」
トレーニング計画の全てのワークアウトが事前に細かく計画されているので、ヤコブは各練習で目標を達成することができます。
「長い目で見ればその重要性について理解しています。トレッドミルでモチベーションを保つのに苦労したことは一度も無いです...... まぁ楽しくはないけども、生産的な練習だと思っています」
シーズン前のベースフィットネス向上
ヤコブの2024年のベースフィットネス推移
冬季にはノルウェーは寒くなり、ヤコブのトレーニングの多くはトレッドミルで行われます。
しかし、冬季は彼の基礎構築期であり、閾値走といった中強度練習を織り交ぜながらより多くの練習量をこなしています。
「心拍数、血中乳酸値、ペース、主観的なキツさから、自分が今どのぐらいの仕上がりかがわかります。
シーズンが進んで走行ペースを上げ始めると、他のデータ指標からフィットネスが向上しているかどうかがわかります」
2024年は、故障から復帰過程ともあって完璧というわけではありませんでしたが、
ヤコブは既に2025年の目標に向かって進んでいます。
シーズン中盤のトレーニング期間に入る前に、今後はトレッドミルでの練習量を増やす予定です。
心拍数に注目する
ヤコブの閾値心拍ゾーン
(閾値心拍数:174bpm、最大心拍数:196bpm、安静時心拍数46bpm)
心拍数はヤコブのトレーニングにおいて重要な役割を担っているため、彼はワークアウトの度に心拍数を注視しています。
「トレッドミル練習では、COROSのスマホ表示機能が非常に便利です。何度もウォッチを確認する必要がなく情報が目の前にあります。 設定ペースを入力したら、後はずっと心拍数を確認しています」
彼の閾値走(LTインターバルとして実施)では、166~177bpm(84-90%HRmax)の閾値ゾーンでの心拍数の維持、推移を目標にして、
ときに最高時速22.0km(2:43/km)のペースで走行しています。
この練習方法を極めれば、ヤコブは5000mのオリンピック金メダルや3000mの世界記録が達成できます(それぞれの平均心拍数は174bpm / 177bpm)。
ヤコブはトレッドミルでのLTインターバルでCOROSのスマホ表示機能を愛用
ヤコブのLTインターバルの分析
6分間の中強度走×4セットのLTインターバルにおけるヤコブの心拍数推移
ヤコブの重要な閾値走の1つとして行われる、6分間の中強度走×4セットのLTインターバルでは、次第に閾値の心拍数まで高めていきます。
この練習は1回目の午前練として毎週、複数回行われています。
一般的に、心拍数はリアルタイムへの反映までに数秒のタイムラグを要しますが、
ヤコブは自分の意図する強度まで調整して、心拍数が目標の範囲内で安定する走行を行っています。
これらのワークアウトの積み重ねこそが、ヤコブの今年の活躍の土台となりました。
「疲労の蓄積の過程で、こうした練習を何週間も続けることで、データ指標の変化を見ることができ、上達度を測ることができます。
ただ、練習のやり過ぎは悪い方向に向かうこともあるので、注意が必要です。
理想としては、失敗のリスクが高くなりすぎる前に、できる限り長い時間の走行を維持して、可能な限り大きなベースを築くことです」
ランナーへのアドバイス
ヤコブのような世界のトップランナーから学ぶことで、あらゆるレベルのランナーがフィットネスを向上させることができ、
同時にトレッドミルでより多くの収穫を得ることができます。
COROSはヤコブとの取り組みによって、ランナーの能力に関係なく、以下のポイントが全てのランナーにとって有益であると発見しました:
- トレッドミルでの練習前に計画を立てる
- 自分の努力感を測るために、相対運動強度に基づいた心拍数などの指標を活用する
- COROSのスマホ表示を活用しながら努力感を確認する
- 退屈な練習も競技のように取り組む
全ての練習には目標が必要です。適切な計画とツールを活用することで、基礎構築段階ではどんなアスリートも成功に導くことができます。
もし、あなたがいつかトレッドミルで走る時があれば、ヤコブからのアドバイスを意識してみてください。