COROSのEvoLabシステムは、トレーニング効率を高めるための様々な指標が含んでおり、その核となるのが「トレーニング負荷」です。ランニングやサイクリング、その他のスポーツにおいて練習量の把握には週間や月間の総走行距離や総運動時間を参考にしがちですが、全ての走行距離や時間が同じ価値だというわけではありません。トレーニング負荷は、練習量と強度を1つの指標に統合することで、身体に実際にかかっている負担をより明確に把握できる指標です。

様々なワークアウトは身体にどのような影響を与えるのでしょうか。トレーニング量が多すぎるか、あるいは不足しているかはどのようにして判断できるのでしょうか。また、どのようなワークアウトが最も効果的なのでしょうか。トレーニング負荷は、これらの疑問など多くの仮説を解くために役立つ指標の1つです。



「トレーニング負荷」とは何か?


Training Hub のスケジュールに表示されるすべてのアクティビティのトレーニング負荷値。


トレーニング負荷(TL)とは、各アクティビティに表示される単一の数値であり、運動内容を定量化して生理学的観点からその負荷の大きさを示す指標です。トレーニング負荷が高くなるほど、呼吸循環器系への負荷も大きくなります。

トレーニング負荷は、運動量(分単位)と強度(アクティビティモードおよび強度に応じて心拍数かペースのいずれかで測定)を用いて算出されます。つまり、運動時間を延ばすか、もしくは運動強度を高めるかのどちらかの方法で、このトレーニング負荷の数値を上げることができます。


アクティビティモードトレーニング負荷計算のために使用される強度
ロードラン / トラックラン走行ペースが閾値ペース未満の場合:心拍数
走行ペースが閾値ペース以上の場合:出力ペース
トレイルラン出力ペース
サイクリング基本的にはパワー。パワー利用不可の場合は心拍数
その他のアクティビティ心拍数


ランナーでもサイクリストでも、その他の運動をする場合でも、トレーニング負荷は運動時間内で蓄積されたアクティビティによる身体へのストレスを定量化する普遍的な指標です。時間と強度に基づく特性により、異なるスポーツ種目のワークアウトによる負荷を、定量化された数値という統一基準で比較することができます。


なぜ筋力トレーニングの時は、トレーニング負荷の数値は比較的低いのでしょうか?
これは、トレーニングインパルス(Training Impulse:TRIMP)による負荷計算が、呼吸循環器系への負荷を高精度に測定するように設計されており、一方で無酸素運動や筋力トレーニングによる神経筋系への負荷を正確に推定できないためです。


トレーニング負荷の実例


1つ目(低強度の標準的なラン)、2つ目(中強度の標準的なラン)、3つ目(低強度の長時間のラン)


前述の通り、トレーニング負荷(TL)は運動量(時間)と強度(おもに心拍数)に影響されます。上記の3つの実例は、トレーニングの内容でトレーニング負荷が調整できることを示しています。

- 1つ目のランは50~60分間で、心拍数はゾーン1~2の範囲です。このトレーニングではTL(トレーニング負荷)の数値が99とやや低めです。

- 2つ目のランは50~60分間で、1つ目のランと走行時間はほぼ同じですが、心拍数はおもににゾーン3~4にシフトしています。このトレーニングではTLの数値が199と中程度です。

- 3つ目のランは2時間以上と長めですが、心拍数はほぼゾーン2の範囲です。このトレーニングではTLの数値が295と高くなっています。

運動に対する心拍数の反応は個人差があるため、同じくらいの強度で運動していても他の人よりもトレーニングでのトレーニング負荷が高く出る人もいます。そのため、「低」「中」「高」の負荷範囲は各々で異なり、ベースフィットネスなどの指標にも同様の個人差が生じます。


COROSのアドバイス:ワークアウトにおいてのトレーニング負荷の数値をより高精度にするために、COROS心拍センサーを装着して、ランニングレベルテストで自分のトレーニングゾーンを調整することがオススメです。



トレーニング負荷のモニタリング方法

COROSのEvoLabシステムは、その週末に週間の全トレーニング負荷(TL)値を合算し「週間トレーニング負荷」の合計値を表示します。この合計値はCOROSアプリやCOROS Training Hubで詳細が確認できます。

中長期的なトレーニングにおける「10%ルール」をご存じですか?
このルールは、週単位で目指すべきトレーニングの進捗率を示しています。例えば、ある週の週間トレーニング負荷の合計値が1,000の場合、翌週の最適な合計値が1,100となるように計画するルールです。このアプローチは広く知られていますが、一方ではトレーニング負荷(TL)の数値はより緻密なアプローチを提供します。すべての走行距離が同じというわけではなく、トレーニング負荷は時間と強度の両方を反映するため、安全かつ効果的な進捗を示す優れた指標です。


COROSアプリ内の週間トレーニング負荷のグラフ


上記グラフの網掛け部分はトレーニング負荷の推奨範囲を示しています。COROSのEvoLabシステムはユーザーのトレーニング習慣を継続的に学習し、翌週以降の週間トレーニング負荷の推奨範囲を示します。

ほとんどのトレーニングプランでは、3~4週間かけて週間トレーニング負荷を段階的に漸増させ、その後回復週を経て、再び元に戻していくというトレーニングパターンが多くみられます。これは、目標達成に向けて効率的にトレーニングを行うための、実証されている実践方法です。

なぜ7日間の累積合計ではないのでしょうか?
直観的には思えても、累積合計では日々の変動が生じ、進捗状況の追跡やトレーニングの調整が難しくなります。一方、COROSの週間トレーニング負荷グラフは毎週同日にリセットされるため、週単位のトレンドを明確に把握可能。さらに、安定した週次スナップショットは実践可能な提案と計画立案を促進します。現在のトレーニングストレスを把握するための累積指標が必要な場合は、「負荷インパクト」が過去7日間の平均負荷を計算することでその目的を果たします。


トレーニング負荷が高度なデータ指標となる


ベースフィットネスと負荷比率はトレーニング負荷に影響を受ける指標


各トレーニング完了時に、各アクティビティにはトレーニング負荷の数値が出ます。この値はEvoLabシステム全体の基礎データとして活用され、ベースフィットネスや負荷比率など、多様な軸でトレーニング負荷の数値を用いて算出される高度なデータ指標の数字を更新します。

- ベースフィットネスは、直近42日間のトレーニング負荷(TLの数値)の平均値であり、中長期的なフィットネスを把握するのに役立ちます。

- 負荷比率は、直近7日間のトレーニング負荷の平均値であり、今の身体にかかっている短期的なストレスを可視化します。

この2つの指標の比率を比較することでトレーニング状態のグラフから洞察が得られ、トレーニングを分析するうえで非常に役立つ指標を提供します。


トレーニング負荷の指標を活用しよう


COROS Training Hub のカレンダーに今後のトレーニング負荷の予測値が表示される


トレーニング負荷はペースや心拍数、運動時間などの測定可能な要素から算出されるため、適切な条件を事前に設定すれば、今後のトレーニングにおけるトレーニング負荷の数値が予測できます。COROS Training Hubでトレーニングメニューをカレンダーに事前に入力しておくと、各トレーニングのトレーニング負荷の予測値が確認できます。週単位で計画を立てると、週間トレーニング負荷やベースフィットネス、負荷比率などの予測値も表示されます。これはフィットネス向上のための「シミュレーション」ともいえる機能です。

例えば、インターバルとロングランの差が週間のトレーニング負荷やベースフィットネスに与える影響を、実施前の段階で比較できます。これによって、故障やオーバートレーニングを回避しつつ着実な進捗を維持するため、トレーニング前の微調整に役立ちます。トレーニング負荷は統合的な視点を提供し、過去と現在のデータを理解しつつ最適な成果を得るための将来のトレーニング計画立案を支援する1つの枠組みだといえます。


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