トレーニングプランの構造を理解することは、競技力を高めたいアスリートにとって大きな違いをもたらします。物事を理解する最良の方法は、要素をそれぞれ細分化することです。トレーニング計画を各フェーズに分類することを「期分け(ピリオダイゼーション)」と呼びます。
COROSはこれらを「フェーズ」と呼んでいますが、場合によっては「サイクル」や「ブロック」など異なる用語が使用されます。しかし、いずれも大きな計画の細かい部分を説明するための異なる言葉にすぎません。
トレーニングプランがどのように構造化されているか、各フェーズの目的、そして個々の調整方法について、以下でご確認ください。
トレーニングの各フェーズ
各トレーニングプランは対象のレースにより内容が異なる場合がありますが、プランの構造はほぼ同じです。この構造は過度なトレーニングを防いで故障のリスクを軽減し、アスリートが適切な時期にピークパフォーマンスを発揮できることを保証します。COROSのトレーニングプランでは、以下のフェーズが含まれます:
1、ペース期(一般性の構築)
2、ビルド期(特異性の構築)
3、ピーク期(種目への専門準備)
4、調整/レース期(最終調整)
5、移行期(回復とオフシーズン)
トレーニングプランの一覧では、画面上部のグラフにトレーニングフェーズの指標が表示され、各週のサマリーには現在のフェーズも記載されますが、すべてのプランに全フェーズを含むわけではありません。ベース期を含まないプランもあれば、ベース期のみで構成されるプランもあります。カレンダー追加前にプランの説明を必ずご確認ください。
ベース期:基礎の構築
ベース期はあらゆる期分けの計画における基礎となります。このフェーズでは、一般的なフィットネスの基礎を築くことに重点を置きます。ランナーの場合、有酸素能力、筋力、総合的な体力の向上が含まれます。
ベース期はランナーの能力によって異なります。経験豊富なランナーは過去のトレーニング効果を維持できるため、このフェーズに費やす時間が短くなる場合があります。一方、8~12週間に及ぶ長期間のベース期を実施するケースもあります。COROSのプランでは、ほとんどの場合3~6週間のベース期を設定しています。
COROSコーチ:6週間の初心者/中級者向けベースプランは、ベース期の一例です。
ビルド期(各要素の仕上げ)
ベース期の終了後、6~8週間続くビルド期では、より高強度なセッションに焦点を移します。ワークアウトはレースパフォーマンス向上に繋がる適応を目的としています。
異なるレースには異なる要件があります。例えば5kmのレースでは、スピードや持久力、高いLT(乳酸性作業閾値)の組み合わせが必要です。そのため、5km用プランにはこれらを重点的に鍛えるワークアウトが含まれますが、VO2maxやランニングエコノミーなど、多くの距離に共通する要素も存在します。
このフェーズでよく見られる要素:
テンポ走:ゾーン3(有酸素パワー)でのセッションは様々なレースの距離で共通
坂ダッシュ:傾斜を高強度で駆け抜けて筋力やパワーを養成
インターバルトレーニング:高強度のランニングを短時間反復して休憩を挟む形式
トレーニングプランは、目標レース前のピークに向けて段階的に構築されます。
ピーク期(パフォーマンスの微調整)
このフェーズでは、これまでのフェーズで培ったスキルを磨くことに焦点を当てます。ワークアウトはよりレースに特化した内容になり、トレーニングプランの中でも最も集中的なセッションが含まれることが多いです。燃え尽き症候群を避けるため、強度と回復のバランスに特に注意しましょう。このフェーズは短期間(2~4週間)のみ続きます。
このフェーズで覚えておくべき点:
● 集中すべきワークアウト:このフェーズでは数回しかワークアウトわ行わないため、それぞれを大切にしましょう。コーチは各セッションの内容を、レースに特化したスキルに焦点を当てて設計します。各セッションの対象スキルに集中するよう心がけてください。
● レースペースのワークアウト:目標の5kmペースでの800mのインターバルやマラソンペースでのロングインターバルなど、レースを想定したセッションです。これにより目標ペースへの慣れと効率性を高めます。
● リカバリー:ピーク期では、休養日はしっかり休み、高強度の日は全力で取り組むことがこれまで以上に重要です。リカバリーランやオフ日を意識しましょう。
レース期(本番への準備)
通常1~2週間続くレース期は、別名「テーパリング(調整期)」とも呼ばれます。この期間は回復に重点を置き、身体がこれまでのトレーニングに適応することを促します。練習量は大幅に減少しますが、強度は維持されます。もちろん、このフェーズの終わりが目標レースの本番の日となります。
おもな要素:
● 練習量の減少:週間走行距離を減らし、身体の修復とエネルギー蓄積を促進
● 調整走:疲労を蓄積させず筋肉のシャープさを維持する短時間かつ高強度のワークアウト
● 休息とリカバリー:睡眠、栄養、メンタル準備を優先し、レース日の最高パフォーマンスを保証
個々のニーズへの適合
伝統的なトレーニングフェーズは基本的なフレームワークを提供しますが、必要に応じて個々のニーズに合わせてプランを調整することが重要です。アスリートの経験値やレベル、故障歴、特定の目標といった要因がトレーニングに反映されるべきです。
● 初心者ランナー:高強度ワークアウト導入前に、しっかりとした有酸素能力の基礎を築くためベース期を長めに設定
● 経験豊富なランナー:より高度なワークアウトが消化可能で、ビルドフ期を短縮しパフォーマンス調整に集中
● 故障をしやすいアスリート:練習のしすぎによる故障防止とバランス維持のため、クロストレーニングや筋力トレーニングを強化
COROSコーチは、様々なレースの距離に対応したトレーニングプランを提供します。各距離の目標と要求に基づき、適切に焦点を絞ったワークアウトを組み込みます。「ワークアウト&トレーニングプラン」では、アスリート向けプランから目標に合ったものが選択できます。
まとめ
期分け(ピリオダイゼーション)の理解は、コーチとアスリート双方にとって強力なツールとなります。ランナーは体力やスキルを磨き、適切な時期にピークを迎えることができます。ベース期、ビルド期、ピーク期、レース期、移行期の各フェーズを理解し実践することで、トレーニング効率が向上し、故障のリスクが最小化され、レース目標の達成に繋がります。