フィニッシュラインを越え、達成感に浸り、アドレナリンも徐々に落ち着いてきた頃。翌日からすぐにバイクへ戻るべきか、それとも少し休養を取るべきか迷う方も多いでしょう。本記事では、COROSコーチングチームがサイクリストのためのレース後リカバリー戦略と、次の目標へ向けた計画的なトレーニングへの移行方法について解説します。


レース後はどれくらい休めばいいか

目標レースを終えたあとに、少し気持ちが落ち込んだり、モチベーションが下がったりすることは決して珍しくありません。グランフォンド、クリテリウム、あるいは数日間にわたるステージレースなど、どのような大会であっても、身体と精神には大きな負荷がかかっています。そのため、レース後の数日間で最も優先すべきことは、フィットネスを維持することではなく、十分な回復です。

休養期間は、レースの距離や強度によって異なります。以下の表を目安としてご活用ください。


イベントの種類推奨されるリカバリー期間
クリテリウム/サーキットレース(60分未満)2~3日間の完全休養、または軽めのスピン
グランフォンド/センチュリーライド(100~160km)4~7日間のリカバリー。後半は軽い運動を取り入れる
1日完結型のロングディスタンスイベント(160~200km以上)1~2週間のリカバリー。2週目から低強度ライドを徐々に再開
ステージレース(複数日)/ウルトラエンデュアランスイベント2~4週間のリカバリー。2~3週目から軽めの運動を開始

これらの回復期間は、研究データとコーチング経験に基づいた一般的な目安です。回復のスピードには個人差がありますので、常に自分の身体の状態を最優先に考えてください。必要であれば、目安より長めに休養を取っても問題ありません。

泥にまみれた自転車とスマートフォンを持つサイクリストの手


回復期間中は何をすればいい?

リカバリーとは、何もしないことではありません。身体の回復を促すために、目的を持ってコンディションを整えることが大切です。完全休養の日でも、次のトレーニングへ移行する期間でも、以下の方法が効果的です。

  • 軽めのスピン:負荷の低いゾーン1で20〜30分程度、上り坂を避けて軽くペダルを回しましょう。代謝によって生じた老廃物の排出を促し、余計な負荷をかけることなく脚のこわばりを防ぐことができます。
  • ストレッチ・モビリティエクササイズ:サイクリストは長時間同じ姿勢を取るため、腸腰筋や腰まわりが硬くなりやすい傾向があります。毎日10〜20分程度、ヨガやストレッチ、モビリティエクササイズを取り入れることで、筋肉痛の軽減や回復促進につながります。
  • 睡眠:トレーニング量が減るこの時期は、普段以上に睡眠をしっかり確保しましょう。筋肉の修復に重要な成長ホルモンは、主に深い睡眠中に分泌されます。可能であれば朝は少し長く眠ったり、日中に短時間の昼寝を取り入れたりするのも効果的です。
  • 栄養補給:レース後も十分なタンパク質を摂取し、筋肉の修復をサポートしましょう。また、質の良い炭水化物でグリコーゲンを補充することも重要です。トレーニング量が減ったからといって、必要以上に食事量を減らさないようにしましょう。


EvoLabの指標をリカバリーに活用する

ベースフィットネス

目標レース後の回復期間では、ベースフィットネスが一時的に低下するのは自然なことです。これは悪い兆候ではなく、身体がこれまでのトレーニング負荷を吸収し、回復・適応を進めているサインです。この指標を継続的に確認することで、フィットネスの変化を把握しながら、次のピークシーズンへ向けてスムーズに移行できます。

COROS Base Fitnessグラフ。シーズン中トレーニング、リカバリー期での低下、ベース期の推移を示す。


負荷インパクト

レース後の回復は、「逆テーパリング」と考えるとイメージしやすいでしょう。テーパリングでは、レースに向けて徐々にトレーニング量を減らします。一方、リカバリーでは、レース後にトレーニング量や強度を少しずつ元へ戻していきます。負荷インパクトは、過去7日間のトレーニング負荷の平均値であり、現在身体にかかっているストレスの大きさを示します。レース後は、この数値を確認することで、負荷を急激に増やしすぎていないかが判断できます。

トレーニングサイクル、テーパリング、レース、回復期間を示すCOROSのロードインパクトグラフ。

レース直後は、大会による負荷の影響で負荷インパクトが大きく上昇します。その後数日間は、運動を行う場合でも短時間・低強度のアクティビティに留め、身体を十分な回復状態へ導きましょう。負荷インパクトがベースフィットネスより低い状態であれば、回復に十分な負荷レベルと判断できます。特に目標レース後は、両者の差が20%以上になることを1つの目安とすると、より効果的な回復につながります。


リカバリータイマー

現在の回復状況は、COROSウォッチのディリーデータやCOROS Training Hubから簡単に確認できます。リカバリータイマーは、身体が完全に回復するまでに必要な時間を表示するとともに、現在のフィットネスレベル、トレーニング負荷、サイクリングパフォーマンス、残りの回復時間をもとに、軽めのトレーニングや、高強度トレーニングを再開する適切なタイミングを提案します。

通常であれば、レースから数日後にはリカバリータイマーは100%まで回復します。ただし、特に長距離レースの後は、数値だけでなく自分自身の感覚にも耳を傾けることが大切です。身体の回復と精神的な回復は必ずしも同じペースで進むとは限りません。気持ちの準備が整う前にハードなトレーニングへ戻ることは、身体の回復が不十分な状態で再開するのと同じくらいリスクがあります。



COROSコーチングチームからのアドバイス

サイクリスト一人ひとり、身体の反応や目標は異なります。トップレベルの選手に適した方法が、必ずしもあなたに最適とは限りません。目標レースを終え、十分な回復期間を設けたにもかかわらず、疲労感や倦怠感、モチベーションの低下が続いている場合、それは「失敗」ではなく、身体からの大切なサインです。

この時期は、普段のトレーニングサイクルでは後回しになりがちな課題へ取り組む絶好の機会でもあります。体幹の強化や股関節の可動域の改善、バイクフィッティングの見直しに加え、グラベルライドやトラック競技など、これまでとは異なる種目に挑戦してみるのもよいでしょう。心身ともにリフレッシュし、新たなスキルを身につけた状態で次のトレーニングブロックへ入ることで、その後のトレーニング効果をさらに高めることができるでしょう。


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