ピレネー山脈の標高3,000m以上の177座を8日間で登頂したキリアンの驚くべき偉業。彼が「人生で最も困難な冒険の1つ」と語るエピソードの詳細をご覧ください。
負傷の影響で2023年のUTMBを欠場したキリアン・ジョルネは、トレーニングに復帰したら何か意味のあることをしようと考えていました。キリアンは幼い頃から馴染みがあり、彼の全ての始まりの地であるピレネー山脈に戻ってきたのです。10月2日から8日間かけて標高3,000m以上の177座を登頂するという記録的な旅を始めました。キリアンはスペインのこの地域に10年以上戻っていなかったため、彼の目標は単なる耐久的な挑戦ではなく自分の生い立ちを再確認し、子供の頃に登った山を再発見することでした。
キリアンはピレネー山脈での今回の旅を「これまで最も困難なことの1つ」だと語り、彼がこの壮大な冒険を完成させるために、肉体的にも精神的にも非常にハードだったことがわかります。その詳細は以下をご覧ください。
使用ウォッチ: APEX 2 Pro Kilian Jornet Edition
データ分析ツール:Training Hub
データ分析チーム:COROS Coaches
浮き沈みを経験した夏
キリアンの2023年のベースフィットネスの推移
備考: ベースフィットネスの数値は、直近42日間のトレーニング負荷の平均値です。
キリアンは今シーズンの始まりとして、4月のエベレスト遠征に向けたスキーモ・トレーニングをノルウェーで行いました。
エベレスト登頂の後、キリアンはUTMBなどシーズン後半のレースに向けて体力を回復させることに集中しましたが、残念なことに臀部の故障の影響で7月のトレーニングは中断されました。
故障からの復帰後のスケジュールは無かったものの、キリアンは今年こそ何か偉大なことを成し遂げようと心に決めていました。彼はスペインで育った過去を振り返り、故郷に戻って新しいプロジェクトを成し遂げようと決意しました。「ピレネー山脈には10年以上行っていないので、今の自分の能力で何ができるかを再発見したかった」とキリアンは述べています。
ピレネー山脈の再発見
Photo: NNormal
キリアンのピレネー山脈でのプロジェクトは、この地域のほぼ全ての3,000m級の山峰を結ぶフォンデラ峰の麓、サレント・デ・ガレゴ(Sallent de Gállego)から始まりました。この8日間の旅はキリアンの身体に今までにないレベルのダメージを与えました。
以下はキリアンの今回のデータです。
日数 | 8 |
山で過ごした時間 | 155 |
登頂した山頂の数 | 177 |
走行距離 | 378.1 km |
自転車での走行距離 | 105.6 km |
累積標高 | 43,251 m |
累積トレーニング負荷 | 6,536 (1日平均817) |
上昇したベースフィットネス | +61 (135から196) |
フルマラソン超えの毎日
Photo: NNormal
キリアンは総距離378.1kmを走破しました。これは、1日あたり47.3kmであり、フルマラソン超えの毎日だったことがわります。活動時間や登頂した山頂の数、累積標高の1日平均は以下です。
● 走行距離: 47.2 km
● 活動時間: 19時間
● 登頂した山頂の数: 22
● 累積標高: 5,406 m
彼の最長記録は走行距離: 71.4km、活動時間: 39時間、登頂した山頂の数: 40、累積標高: 7,959mでした。
毎日、キリマンジャロに登っているような感じです。
キリアンの休憩時間はどれくらい?
Photo: NNormal
キリアンは驚くほど強靭な身体を持っていますが、このような活動を続けるには適切なリカバリーが必要です。今回のプロジェクト全体を通して体を休め、食事や睡眠をとって再び前に進むためにとった休息は合計35時間でした。
以下は各日の休憩時間です。
日程 | リカバリー時間 |
1日目 | 8時間 |
2日目 | 5時間 |
3日目 | 8時間 |
4日目 | 5時間 |
5日目 | 無し |
6日目 | 6時間 |
7日目 | 2時間 |
8日目 | 1時間 |
キリアンは1日平均で4時間しか回復時間に充てませんでした。
身体に与えた強度を管理する
プロジェクト期間中のキリアンの強度別閾値心拍ゾーンのグラフ
備考:強度別閾値心拍ゾーンのグラフは、各ゾーンでの刺激時間を細分化し、トレーニング強度をより細かく分析できます。
今回のプロジェクトは8日間にわたっての長時間運動のため、キリアンにとって身体にどれだけストレスがかかっているかを把握、管理することが極めて重要でした。上のグラフから5つの彼の閾値心拍ゾーン内に費やされた時間はわずか21.5時間しかありませんでした。彼はほとんどの時間をゾーン1の低強度未満の心拍数であったことがわかります。よりよくキリアンの強度を理解するため、このグラフをもう1度見てみましょう。
● ゾーン1(キリアンは88bpm未満)以下の時間:86%
● ゾーン1~2(イージー ~ マラソンの強度)の時間:11%
● ゾーン3〜5(乳酸性作業閾値以上の強度)の時間:3%
身体へのストレス:キリアンのトレーニング負荷
プロジェクト期間中のキリアンのトレーニング負荷の推移
備考:各トレーニングでは、身体にかかる負荷の大きさを表すトレーニング負荷の数値が計測されます。トレーニング負荷=強度×時間
キリアンは8日間で合計6,536のトレーニング負荷を積み上げ、その1日平均は817です。キリアンはベースフィットネスの数値が135の時にこのプロジェクトを開始したので、1日の平均負荷はそれまでの605%増となりました。
この大幅な増加で、彼はベースフィットネスの数値を135から196まで急速に高めることができました。
普段7kmを走るランナーがキリアンのトレーニング負荷を体験するなら、8日間連続で毎日、マラソンを走らなければなりません。
疲労困憊...
Photo: NNormal
キリアンはCOROSデバイスで保存した記録をStravaに同期し、キリアンの個人アカウントとStrava Nnormal Clubに毎日シェアしました。
クリックしてStravaでキリアンのアクティビティを確認します。
この冒険の間、彼は毎日自分の限界に挑戦し、心の中の特別な場所を再発見したのです。
「とても困難だった。肉体的にも精神的にも限界に達した8日間の旅だった。あれだけのピークを越えて移動するのは美しく、とても素晴らしいことだが、同時にとても困難で、おそらくこれまで一番大変なことだった。だから、今はちょっと疲れきっているんだ!"
もっと色々なシーンを見たいですか?彼のアパレルブランド、Nnormalが制作したキリアンのドキュメンタリーを見て、ピレネー山脈の素晴らしい景色を体験してみましょう。
COROSチームは、この信じられない旅を終えたキリアンに祝福を送るとともに、彼の回復を願っています!
Photo: NNormal