そもそも、トレーニング計画がどのように機能するかを理解することが、技術習得のために役立ちます。そして、そのための最も良い方法は、トレーニング期間全体をそれぞれ小さく分割することですが、それを「期分け」と呼びます。
COROSのトレーニングプランやCOROS TrainingHubでは、小さく区切られたトレーニング期間のことを「フェーズ」と呼んでいます。このフェーズは、「サイクル」や「ブロック」という呼び方もありますが(例:トレーニングフェーズ、トレーニングサイクル、トレーニングブロック、トレーニング段階など)、どれも小さなトレーニング期間の似たような意味です。
以下ではトレーニング計画の構造、各フェーズでの目的、個別メニューを組むための調整を学ぶことができます。
トレーニングフェーズ
COROSアプリでダウンロードできるトレーニング計画の雛形は、目標記録や種目によって様々です。それでも、それぞれの雛形の構造はフェーズの進展が非常に似ており、各フェーズを計画的に消化すると、オーバートレーニングや故障の予防や目標レースに向けてピークを作ることができます。COROSのトレーニングプランでは、以下のトレーニングフェーズがあります。
- ベース期(一般的な基礎構築)
- ビルド期(具体的な準備段階)
- ピーク期(競技特性への対策)
- 調整期 / レース期(最終調整)
- 移行期(リカバリーとオフシーズン)
トレーニング計画の雛形を表示する時や、直接自分でトレーニングを入力する時は、COROS Training Hubの上部のグラフにトレーニングフェーズの指標が表示されます。また、各週には週間のトレーニング概要とその週のフェーズも表示されます。COROSが提供するトレーニング計画の各雛形のには、上記の5つのフェーズが全て含まれているわけではありません。ベース期に特化したものもあれば、ピーク期やレース期に特化したものなど短期的な雛形もあるからです。雛形をトレーニングカレンダーに追加する場合は、各雛形のトレーニング概要を理解するようにしましょう。
特定のトレーニングプランの詳細や、自分に最適なプランを見つけるためには、coach@coros.com までお問い合わせいただくか、COROSの認定コーチにご相談ください。
ベース期:基礎構築
ベース期は期分けのスタート地点であり、このフェーズではベースフィットネスの構築を目的としています。ランナーにとっては有酸素能力や筋力、全体的なコンディショニングの向上を含みます。
ベース期の期間の長さは、ランナーの能力によって異なる場合があります。経験豊富なランナーは、それまでのトレーニングの成果からベースフィットネスを維持することができ、ベース期を省略することもできるかも知れません。そうではない場合、または故障明けやシーズンオフ明けなどではベース期に2〜3ヶ月を費やすこともあり、COROSが提供する雛形には3〜6週間のベース期があります。
ベースフェーズの例:初級/中級ベース構築(6週間)
ビルド期:ワークアウトの本格的始動
ベース期に続くビルド期は6〜8週間続きますが、ベース期よりも強度の高いワークアウトが追加されていき、レースでのパフォーマンス向上のための適応を目的としています。
トラックレースからマラソンまでの各種目にはそれぞれのニーズがあります。例えば、5000mのレースではスピード、筋持久力、LT(乳酸閾値)のバランスが必要なので、それぞれのニーズに対応するワークアウトが含まれます。とはいえ、VO2maxやランニングエコノミーなど、種目を問わずに共通するニーズもあります。
ビルド期では以下のワークアウトに取り組みます。
- テンポ走:ゾーン3(有酸素パワー)の強度で基礎の上積みを行います。
- 坂ダッシュ:高強度の坂ダッシュで筋力とパワーを養います。
- インターバル走:比較的短めの疾走距離の高強度インターバルを行います。
トレーニング計画は目標レースにピークが来るように構築する
ピーク期:パフォーマンスの微調整
ピーク期は、その前のフェーズで磨かれた能力をさらに強化するフェーズです。ワークアウトはよりレースに特化し、トレーニング期間全体を通して最も強度や負荷が高いワークアウトを消化する時期です。オーバートレーニングを避けるために、強度・負荷とリカバリーのバランスが崩れないように注意してください。このフェーズは2〜4週間ほど続きます。
ピーク期では以下のことを念頭に置きましょう。
- 重要な要素を考慮したワークアウト:ピーク期はワークアウトの回数が限られているため、1回1回のワークアウトを大切にしましょう。コーチはワークアウトでレースに特化した要素を考慮してメニューを設定しています。各ワークアウトでその要素をクリアできるように集中するのが重要です。
- レースペースのワークアウト:レースを意識したレースペースのワークアウト、例えば目標の5000mのレースペースでのインターバル走や、マラソンペースでのテンポ走やロング走などです。これらのワークアウトは、目標ペースに慣れることや、その効率性を向上させるために行います。
- リカバリー:ピーク期ではしっかりと休養することと、ハードなトレーニングのどちらも重要です。リカバリージョグや休養日でもしっかりと目的を持ちましょう。
レース期:パフォーマンスの準備
レース期は通常1〜2週間続く調整期間ですが、この期間はリカバリーを重視しましょう。それまでのトレーニングに適応するための身体の調整が行われ、練習量が大幅に減ります。しかし、トレーニングの強度は落とさずに維持していきます。このフェーズの終わりには目標のレースを迎えます。
おもなポイントは以下の通りです。
- 練習量の削減:週間走行距離を減らして、身体が修復するためのエネルギー補充を行います。
- シャープなワークアウト:疲労を溜めずに筋肉を活性化させるための短い練習時間の高強度練習を行います。
- リカバリー:レース当日にピークを迎えるために睡眠、栄養、メンタルの準備を優先しましょう。
ヒント:目標レース後の数週間は、リカバリーとレースを振り返るための「移行期」と考えることができます。次の目標に向けて取り組む前に、自分の強みと弱点を分析するための時間を少し取ることを忘れないでください!
個人のニーズに合わせた微調整
以上のフェーズは一般的な枠組みですが、必要に応じて計画を個人のニーズに合わせてカスタマイズすることが重要です。経験値や競技力、故障歴、具体的な目標などが、トレーニング内容や期間に関係してきます。
- 初心者は、より強度の高いワークアウトを取り入れる前に、有酸素能力のベースを築くために、ベース期により多くの時間を費やすと良いでしょう。
- 経験値が高い場合は、より高度なワークアウトと短いビルド期であっても、パフォーマンスの微調整を行うことができるでしょう。
- 故障をしやすい場合は、患部の過剰使用による故障を予防して負荷のバランスを保つために、より多くのクロストレーニングや筋力トレーニングを含める必要があります。
COROSコーチングチームは、各種目の目標に応じて適切に的を絞ったワークアウトを含むトレーニングプランを提供しています。COROSのワークアウト&トレーニングプランライブラリには、全てのレベル向けのプランがあり、それぞれの目標に合わせて選択できます。
結論
期間の設定について理解することは、コーチや選手の両方にメリットをもたらします。ランナーはフィットネスを向上させて能力を高め、適切なタイミングでピークを迎えることができます。ベース期、ビルド期、ピーク期、レース期、移行期といった異なるフェーズを理解して実践することで、アスリートはトレーニングの効率を高めつつケガのリスクを最小限に抑え、レースの目標を達成することができます。