ヴァンサン・ブイヤールは有り得ないことを成し遂げりました。フルタイムの仕事を続ける市民ランナーのブイヤールは今年のUTMBで優勝し、アマチュア選手としてでも世界で成功する方法を証明しました。
ブイヤールはCOROSとのスポンサー契約がないにも関わらず、自身の戦略やデータを共有することを承諾してくれました。
そして、今回の記事は多くのランナーにとって役立つものかもしれません。
彼のこれまでの計画は、明確かつ一貫性のある毎週のトレーニングの目的、彼を安定させるためのツール活用、そして妻のカミラの絶大なサポートなどで構成されています。
ブイヤールがHOKAのプロダクトエンジニアとして普段働く傍ら、どのようなトレーニングを行なったかを以下でご紹介します。
ブイヤールの週間トレーニング
ブイヤードは週ごとに同じようなトレーニングを続けています。これは一貫性を保つためだけでなく、私生活で他の機会が生じたときのために柔軟性を持たせるためでもあります。
各週のメニューの構成は以下:
- 8~20分のインターバル走(テンポ/閾値)で週に1~2日は強度を高める
- 脚に負担をかけずに運動量を増やすクロストレーニングの日を週に1日(自転車)
- 故障予防のための筋トレ / ストレッチを週に1~2回
- 練習量確保のためのゾーン2強度のランニングを週に1回
ブイヤールは「強度の高いトレーニングや自転車でのクロストレーニングは何曜日にやってもいい。自分のスケジュールや体調に合わせて、必要に応じて調整することができます」と話しています。
ブイヤールの各週の目標
一貫性がありつつ柔軟性を持たせる計画で、ブイヤールは週あたりのトレーニング負荷を10%増やしていくことを目標にしていました。トレーニング負荷の漸増がフィットネス向上への持続可能なアプローチとなります。
「トレーニング負荷のグラフやデータ指標を活用して、毎週ごとに着実にフィットネスを向上させてきました。重要な大会から逆算して、各週で設定しているトレーニング負荷をこなせるよう目指します」
この計画は毎週微調整するようにして設計されているが、仕事量の増減、旅行や生活上の人付き合いなど、彼のトレーニングには調整を加えるが必要があるときも多くなります。
「その週のトレーニング負荷を見て、それを基にして今後の計画を立ています。昨年12月以降はトレーニング負荷の微調整を行ってきました。
なぜ総走行距離ではなく総負荷を週間の目安にするのか?
多くのランナーが気づいているように、月間や週間の走行距離の内容はランナーのレベルによって様々です。
物事をシンプルに考えるため、ブイヤールは自分のフィットネス向上のために、トレーニング負荷という重要なデータ指標にのみ注目しています。
「私は1週間のアクティビティとトレーニング負荷を見て、それが週ごとにどのように変化するかを確認します。
私は4週間の負荷増量期間と1週間の回復期間のサイクルを繰り返していきます。週間の負荷を確認することは、週間の走行距離や獲得標高を確認する代わりのデータ指標です。
これは、私の身体が感じているトレーニング刺激を実際に示しているからです... また、サイクリングの努力感を理解する時にも負荷を確認していて、クロストレーニングをやりすぎないようにしています」
年間を通じて異なる焦点
ブイヤールはこの1年間の大半をUTMBに向けたトレーニングに集中しました。直近1年間のデータを活用して、適切な時期にピークを作るための計画を立ちてました。
フルタイムの仕事をしている市民ランナーにとって、ピークシーズンに向けての土台を作るなら、年間のうちの立ち上げの基礎構築期でも価値を得ることができます。
ブイヤードは週40時間以上の勤務をこなしつつパフォーマンスを上げるために、以下の3つのシンプルな原則に従っています:
#1 フィットネス向上の目標を設定することから1年間のトレーニングをスタートさせる。
#2 各週のトレーニング負荷の目標値・目標範囲を設定する。
- 強度の高い練習、クロストレーニング、筋トレ・ストレッチ、ゾーン2でのロングランの構成で週間メニューを組む。
#3 仕事などとの兼ね合いで各週で微調整を行い、可能な限り週ごとにトレーニング負荷を10%増やしていくことを目指す。
周囲のサポート
UTMB優勝のパフォーマンスを発揮するには、周囲のサポートが必要です。ブイヤールの競技目標は仕事仲間にも理解されていると話します。
彼らは相互理解を深めており、トレーニングが仕事の中身に影響を与えることはないと言います。
「時差の関係で早い時間や遅い時間にミーティングをすることもありますが、そのおかげで1日のうちで必要なことをする時間を確保することができます」
仕事以外では、ブイヤールは妻と生活を共にし、旅行や友人との付き合い、その他の社会的な時間を過ごしています。
「カミラとは仕事とトレーニングのスケジュールについてよく話し合います。自分がやりたいことが全部できるように、事前に計画を立てることが大事です。
彼女は私のランニングに対する願望をとても理解してくれて、私の目標をサポートしてくれます。その代わり、私もトレーニングのためにどれだけ時間を割くかを意識して、現実的なスケジュールを立てたいのです... お互いにバランスを取りながらうまくやっています」
ブイヤールが成功を収めた理由は、常にスケジュールを調整して時間効率を高めたことです。
多くの人たちとの調整、頻繁なコミュニケーション、そしていつ何をすべきかを正確に把握しておくことが必要ですが、この柔軟性のおかげで、彼は生活の様々な分野で成功を収めることができています。
「トレーニングをする時間がとれる場合は、事前にしっかり計画を立てているので、自分が何をすべきかをはっきりと理解しています。
仕事をこなしたら計画通り遂行します。もし予期せぬことが起こっても、1週間のトレーニングスケジュールが決まっているので、それを微調整して翌週にまた計画を立て直すことができます」
成功へのその他の指標
ブイヤールのトレーニングに対するアプローチ以外にも、彼が1年間を通して確認してきた重要なデータ指標があります。
・リカバリー
ブイヤールは日常生活に支障が無いよう日常的に回復具合をチェックしています。
長年、このスポーツに情熱を注いできたブイヤールは、このリカバリー指標を0か100かの判断基準として使うというよりかは、ある種のリマインドとして活用しています。
「ウォッチの指示に100%従うべきではないですが、1つの指標として活用しています。“疲れているように見えるよ”と友人が教えてくれるようなものです。僕のトレーニングは一貫性があるから、ウォッチはずっと正確なデータを反映しています」
・睡眠
トレーニングの疲労だけでなく、ブイヤールは睡眠の重要性とそれが日常生活に及ぼす影響を理解しています。
「仕事、トレーニング、旅行などで疲れている時にとても役立っています。私はこれまで寝つきが良い方ではなかったので、これはきちんと回復するための役立つツールで、睡眠が浅くなるとすべてが崩れ始めるんです」
・ストレス
ブイヤールはトレーニングに大きな重点を置く一方で、テーパリングの最大化を行いました。日常的なストレス検知機能を活用し、大きな大会に向けてできるだけストレスを軽減することを目指しています。
「テーパリング期間はこのグラフを見ています。この期間は日常的なストレスが溜まらないように、低い数値を推移するように心がけているので、このグラフがとても役立っています」
2024 UTMBでのレースプラン
トレーニングへのアプローチと同じように、ブイヤールもUTMBのレース戦略を事前に計画しました。親友のティボー・ガリビエ(プロウルトラランナー)からレース戦略を学んだブイヤールは、コースの予習のために使っていた古いツールからCOROSのルート作成機能を活用しました。
「コース作成時にすべてのウェイポイントにエイドステーションと目標タイムの表示に時間をかけました。補給プランのコードも作りました。
自分に必要な補給と自分の過去のタイムに基づいて、今回はこの2つを変更したんです」
UTMB パフォーマンス
2024年のトレーニング目標を実行し、その過程で重要な指標をモニタリングしてきたブイヤールは、UTMBのコース全体で均等にペース配分することを目標にスタートしました。
トレーニングでの数値とサイクリストとしての経験から、彼はパワーのデータ指標をレース中に活用しました。
「ウォッチにペースを表示させることは、このレースでは望んでいませんでした。私はこのスポーツでの長い経験があるので、ウォッチを見て数字を見ると、それによって動揺することもありました。
でも、パワーの数値は私にとってリラックスできる数字で、自分の努力感を正確に示してくれます。
だから、レースの序盤に興奮していて心拍数が上がっていたけど、パワーが自分の想定範囲内にあったから大丈夫だと思ったんだ」
上のグラフでわかるように、ブイヤールはレース全体で安定したパワーを維持することができました。
「最後のいくつかの登りでは、誰もがキツいです。僕は良い感じでこなせていきましたが、歩行ではなくしばらく走れていたこともわかっていました。
ウォッチを見ても同じようなパワーで、自分の感覚に関係なくレース後半でもパワーの推移が似ていました。
そして、レース後半では心拍数の推移がなだらかになる傾向があるので、パワーは自分のパフォーマンスを測る最高の指標でした」
・UTMB総合成績
タイム:19時間54分23秒
平均心拍数:134bpm
最大心拍数:174bpm
平均パワー:207ワット
ブイヤールが考えるワークライフバランス
「プロアスリートのようなトレーニングをするために、自身がプロアスリートになる必要はない。」‐マリオ・フライオリ(プロコーチ)
「(プロコーチのマリオ・フライオリが唱える)この言葉の意味は、プロアスリートはトレーニングが仕事であり、
その一部分として“目に見えないトレーニング”(毎日の睡眠と栄養・水分補給、継続的な筋トレ・ストレッチ、適切なリカバリーなど)を構成しているすべての小さな積み重ねに集中しています。
この“プロアスリートのマインドセット”を取り入れました。
トレーニングとの向き合い方、自分のレベルもそうですし、他にどんな予定があったとしても野心的な目標を設定し、それを達成するための高い計画性を持つことが大切です。
ライフワークバランスをとりながら、計画を立ててその計画にコミットすることこそがすべてです」
COROSとヴァンサン・ブイヤール
ヴァンサン・ブイヤールは2024年のUTMBチャンピオンです。トレーニングからリカバリー、計画から実行に至るまでCOROSの製品を活用してきた彼の競技をより効率的にするうえで、テクノロジーが重要な役割を果たしたことは間違いありません。COROS APEX 2 ProとCOROS心拍センサー、COROSアプリ、COROS Training Hubを活用することで、ブイヤールは仕事や日常生活以外の時間を最大限に活用することができました。私たちはブイヤールのこの素晴らしい功績を祝福し、世界中のランナーに今回、メッセージを伝えてくれたことに感謝しています。